2024/05/11
当店に通ってくださる方であれば、一度は遭遇したことがあるであろう児童。
それがえいまくんです。
敷居が高いようで低い、低いようで高い、そんな当店にキッズバイクで乗りつけ、三頭身の子供が一人でトコトコと入店してきたかと思うと
「ぼとるげーじをつけたいんですけど。」と言いました。
「申し訳ないんですけど…、ちょっとこのバイクに取り付けられるゲージが無いんですよねー」と私が言うと、
「わかりました」と沈痛な面持ちで立ち去りましたが、
それから数日して、また一人で来店。
え「長距離走りたいんですけど、それだとやっぱりボトルは持ってたほうがいいですよね?」
み「長距離…、そうですね…確かに…。持ってたほうがいいですね。ただ…これで長距離行くんですか?」
え「はい。わたし、距離走るの好きなんですよ。」
み「おー、いいですねー」
そんな風に、毎回一人で来ては商品の質問してみたり、自転車への情熱を語っていく男子。
長いこと自転車販売をしているけど、こんな子供に会ったことがないので面白かった。
大体のお子さんは親御さんと一緒に来て、要望を親御さんが代弁することがほとんど。
私たちがお話しするのは、どちらかと言えば本人というより、親御さんと話すことの方が圧倒的に多いと思います。
まあそれが当然、というか、いたって一般的。
しかし、えいまくんの場合は常に本人。
いつでもちゃんと丁寧語で、最初からしっかり自分の考えを伝えて来ます。
どこで仕入れたのか分からない謎の知識を披露してくれるのも、聞いていて楽しい。
初来店から2年ぐらい経った頃には、愛車は大型店で買ってもらったクロスバイクに変わり、相変わらず足繁くやって来ては自転車のことを語る日々。
そして、初めて当店で買い物をする日が到来。
自信に溢れた歩調でツカツカと入って来て、
キリリとした顔で「ボトルゲージとボトルをください」と言った時は、何故か私が感無量に。
(※その前の週に「来週ボトルゲージを買う下見をしてます」と予告めいたものをしに来てたので、店頭の在庫をチェックしてみたら、なんとカーボン製(ちょっと高価)しか無かったので、慌てて樹脂製(ちょっと安価)のものを取り寄せておいた)
基本的に、買い物はほぼ自分のお年玉で年間の予算を組んでいるえいまくん。
本当にいろいろ欲しいものはあるけど、確実に必要なものを取捨選択しながら揃えていってる様でした。
ヘルメットが努力義務化された時は、
「やっぱり必要だと思うんですよね」と、KASKのヘルメットを購入。
私も途中、何度も(この子、周りの友達と話合うんだろうか…)と心配してたんですが、高学年になるとお友達と一緒に来店することもチラホラ増えてきました。
ある日一緒に来ていたお友達が、「えいまは変わってる!普通のクロス乗ってるのに、小学生でこんなヘルメットかぶってる奴いないよ!」と言っていたのを聞いて、
(あ、やっぱり変わってると思われてるんだ)と深く納得したりもしました。
とはいえ、そんな風に言われても、本人は「自分がカッコいいと思ってるんだから、そんなの関係ない!」と反論していたけど。
上の写真は、北広島のサイクリングロードで知り合いになったおじさんがくれた『NISEKO CLASSIC』の記念ジャージを自慢げに着てきた時。
彼はこれを「ニセコクラシックのチャンピオンジャージ」って必ず言うんだけど、チャンピオンジャージではない、という事は別に言う必要は無いか、と思って黙っています。
お母様から「走行範囲は近所まで!」という言いつけがあるにも関わらず、もはや、なし崩し的に小樽やら千歳まで走りに行っては「今日は⚪︎⚪︎キロ走りました」と報告に立ち寄り、
感覚的には「うちの非常勤バイトかな?」と思うぐらいの頻度で、あらゆる報連相業務(目的地、本日の最高速度、体重の増減、etc…)をしていくので、週8で会ってる気になる時もありました。
とりあえず、そんな感じで当店に通うこと4年余り。
色々なご縁が良いタイミングで繋がって、私のサブ機のアルミロードを譲る事に。
古いアルミロードとはいえ、整備しながら大切に乗り続けた一台。
しっかり乗ってくれる人に譲りたいと思っていたので、その点ではえいまくんが二代目襲名先としては申し分ない。
納車の日、一応いつものセンターステージに飾っておいたら、
「かっこいい…!」って喜んでくれて、嬉しかったなー。
少し話は変わって、
『ロードバイクブームは終焉を迎えた』的なことよく聞きますが、そもそもブームが来てた認識がない。
え、いつからのこと?コロナ禍?
コロナ禍からお店をスタートした我々にとっては、未だかつてない「商品不足・納期遅延」の嵐に翻弄されまくっていたので、ブーム来てたことに全く気づいてなかった。
まあだけど、そもそもブームなんてものは来ては去るもの。そんなものに一喜一憂するほど自転車店はヒマではない。
ロードバイクはタピオカでは無いのだ。
いつだって、自転車で走ることが「最高に楽しい!」と思っているお客様や仲間がいて、
9歳で「ボトルゲージつけてロング走りたい」という子供が現れたりする。
そんな人達がいる限り、ブームに終焉は来ても、ロードバイクは終わらない。
しかしながら、この息を呑むような値上げは一刻も早く終わってもらいたいと心底思う。
為替、資材高騰、世界情勢、確かに色々あるとは思うけど、自転車を始めたくても始められない人達が増える状況はとてもツライ。
話がだいぶ逸れましたが、
三輪車みたいなキッズバイクに乗ってきた子供が、声変わりしながら成長していって、飽きることなく走り続けてる。
「ロードレースに出たい」と言ってる彼が、いつか北海道を代表するような選手に…なーんて!ならなくてもいいから、ずっとどんな形であれ自転車に乗り続けてくれたら嬉しいと思っているのです。
impress cycle works